偶然と必然

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階段を上りきると、 扉を背中で抑えて、 怪しい男の人が部屋の中へと導いてくれた。 大きな赤いソファーが目立つ黒と赤を基調とした、 メゾネットタイプの家のような空間。 「すご・・・」 声にならないほどの音で思わず呟いた。 「ようこそ、当店のVIPルームへ」 「あ・・・あの。お兄さんは・・・・?」 ミツルはが尋ねると、怪しい男の人は 大きな手のひらで顔を覆い笑いをこらえていた。 「あ・・・あの」 「いや、ゴメンね。自己紹介がまだだったね」 怪しい男の人は帽子をぬいでミツルにがぶせた。 「店長の櫻井 涼(サクライ リョウ)です。」 「店長さん!?」 同じタイミングで私達は声を発した。 「そう。よく見えないとか言われるけど。 君達の名前は?」 涼さんは、カウンターのうしろにある戸を開いて、 タオルを数枚取り出し 手渡してくれながら私たちに尋ねた。 「ミツルです。」 「エミです。」 「ミツルちゃんに、エミちゃんか、 いい名前だね? エミちゃんさっき大丈夫だった? まだタオルあるし 汚れ落ちなかったら言ってよ? クリーニング代だすからさ」 「あ・・・はい。」 怪しい男の人は 面白くて優しい近所のお兄さんのような 店長だった 。 涼さんの人柄のせいか 前からの知り合いのように それから私達はたくさん話をした。
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