偶然と必然

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『よぉ。今大丈夫? そうそう、こないだ連絡くれた件なんだけどさ ・・・うんそう。 友達2人連れてってもいいか?・・・ あはは、可愛い子だよ! ・・・ばーか。っでいつだっけ? おう。じゅあ当日な!・・・ わぁーってるよ!ハイハイ。またな。』 電話が切れたことを確認すると、 振り返り笑顔で問いかけて来た。 「1月5日、暇?」 「え・・・。」 「いやぁ知り合いがバンドやっててさ、 なんか本人いわく楽しいらしいから、 刺激になるかわからないけど、一緒に行くか?」 1月5日は私とミツルには用事ができる予定だった。 それは、チケットが手に入らなかった ネイキッドのライブの日。 もしかして?まさか?と思いながらも、 大きな期待が膨らんでいた。 「そのバンドって?」 「バンド名?えーっと、なんだったけ。 ナじゃないな・・・ ネ・・ ネイキ? あー思い出せない!」 「ネイキッド!!」 三人同時に声を発した。 神様という存在に始めて心から感謝した。 明け方。 私達は無言で帰った。 なんだか言葉にしたら 消えてしまいそうな気がした。 きっとミツルも、窓の外に映る朝焼けを 同じ気持で見つめていたと思う。 怪しい男の人はクラブの店長で 私たちにとって神様だった。 神様。 偶然をありがとう。 心の中で何度も叫んだ。
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