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孤高
彼は孤独だった。
だが、彼はその事をなんとも思ってはいなかった。
彼は最初から孤独だったから。
孤独こそが己の居場所であり、心の安らぐ場所であると思っていたから。
故に彼は気高く、美しく、そして強かった。
ある日、彼に仲間ができた。
それは彼が望んだのではなく、彼に憧れてついてきただけの、彼にとってはただの厄介者でしかなかった。
静かだった彼の日々に、彼以外の音が紛れ込むようになった。
彼はその音を初めは疎んでいたが、次第に慣れていった。
ある日、仲間が動かなくなった。
暖かかった体がだんだん冷たくなっていくのを感じて、彼は仲間が死んだのだと理解した。
それからだ。
彼が弱くなってしまったのは。
彼は毎日新たな音を探して、いろんな所を巡り巡った。
静かすぎる日々。
もう音を聞く事ができない日々に、彼は次第に覇気を失っていった。
そしてとうとう、彼は死んでしまった。
原因は単純なもので、寂しさからくるストレスに体が耐えきれなかったからだった。
彼は温もりを知ってしまった。
彼は音を知ってしまった。
故に彼は、冷たくなった。
寂しさを知ってしまった兎が生きていくには、この世界は厳しすぎた。
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