~隔てる境界~

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「ぎゃっ…。」 何とも腑抜けた声を残して セルティマは仰向けに倒れた。 「セルティマ!!」 ベルハウトが彼の体を 抱き起こす。 セルティマはかっと 目を見開いたまま、 ぴくりとも動かない。 鋭い石つぶてが当たった 額からは血が脈打つように 流れ出る。 「セルティマ!分かるか!?」 「セルティマ!いたい、カリス、なおす!」 カリスが杖笛を取り出して 治療術を紡ぐが、 目を見開いて倒れた セルティマが かすれた声で伝える。 「…だめだ…。ここで…使えば…カリスの…身体が…もたない…。『魔力』が…ある…【境界の樹海 マリルス】に…ー。隔てた境界に…ーー。」 セルティマは彼の腕の中で 意識を失った。 呆然としている訳にはいかない 彼を襲った石つぶてを放った 張本人はすぐそこにいる。 「フィート!何が狙いなんだ!?」 ベルハウトの怒りの声に 反応して今度は 四方向から石つぶてが 飛び交う。 一同はそれぞれの 武器を構えて、 飛びかかる石つぶてを 一つずつ粉砕してゆく。 「ちっ…!こちとら頭を怪我した仲間が居るんだ!!ほんっと容赦ねぇなぁ!!おいっ!」 「らちが空きません!この塔から離脱しましょう!!」 ベルハウトとウルクは、 意識を失ったセルティマを 担いで塔の階段に滑り込む。 エリオットとカリスも 姿勢を低くして階段を下りた。 「リスフェル!早くっ!!」 「待って!行くっ…!!」 最後に残ったリスフェルも 急いで階段に向かったが、 足を踏み外して ベルハウトの上に落っこちた。 「おわっ…!大丈夫か?リスフェル。」 「…あ…うん…、大丈夫…。」 「良かった、急ごう!!」 頬を赤らめた彼女の 事など気に止めず、 ベルハウトは リスフェルの手を 優しく握り階段を駆け下りた。
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