~重過ぎる過去~

2/11
208人が本棚に入れています
本棚に追加
/636ページ
【境界の樹海 マリルス】        † 一同は深手を負った セルティマをなんとかして 【境界の樹海 マリルス】に 連れてくる。 彼の顔面は相変わらず 血の気を失い、 額から流れる朱が際立つ。 「ウルクゥ…、ごめんねぇ…。」 「ひっ!?起きていたのですか?」 ウルクの背に おぶられた青年は、 口角を釣り上げて 笑って見せる。 意識を戻した彼に、 ベルハウトは静かに 声をかける。 「大丈夫なのか?セルティマ…、顔は尋常じゃないぐらい真っ白だが…。」 「幾分かは…楽…かな…?」 セルティマはそう言うが、 彼らを覗く橙の瞳は 焦点すら合わず 生気はほぼ皆無だ。 「…言語能力は大丈夫か…。」 「ベルハウト?何を…呟いているんですか…?」 エリオットが尋ねるが、 ベルハウトは神経を 集中しているためか 聞こえていないようだ。 「ベルハウト…?」 「…あ、何だい?エリオ君。」 「…その…何してるのかな…って…。」 「いや、普通にセルティマの事大丈夫かなと思ってね。」 足を止めて彼は答える。 樹海の中に進んで もう随分経った。 「…カリス、治療術をセルティマに施してやってくれ。」 「…セルティマ、なおす、まつ。」 ウルクの背におぶられた 青年にカリスの 治療術が施こされる。 『…ヒール。』 慈愛を込めた温かい光が セルティマの裂けた額に、 優しく触れる。 傷口は徐々にふさがり、 青年の目に生気が戻った。 「あっ…うっ…。」 「大丈夫か?セルティマ。」 「…うん。なんとかね…。」
/636ページ

最初のコメントを投稿しよう!