~重過ぎる過去~

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「俺は聖者なんかじゃない。だけど…。」 「…?」 ベルハウトはそこで 別の話題に切り替えた。 「そんなに気になるんだったら、今度調べなよ。ウルクならすぐに分かるでしょ。」 彼はうまくはぐらかして 軽快に歩き出した。 ベルハウトは人間なのに 魔力に何の反応を取らず、 平然として立ち振る舞う。 「…ベルハウト…あなたは一体何を隠しているんだ…。」 「おーい、聞こえていますよー!?」 深く考えるウルクに 先歩くベルハウトが、 楽し気にからかう。 「すみません、次からはもう少し静かに言いますね。」 「ウルクにしてはましな冗談だな。」 「僕は本気ですよ?」 ウルクの意地悪に笑った顔に、 彼は苦笑いを浮かべる。 ある程度辺りを 歩き回った彼は、 昼食を作る充分な 食料をかき集めた。 「…これだけあれば、軽く昼食はまかなえますね。」 「ん、じゃ…、ウルクこれ全部任せたわ。」 「一緒に戻らないんですか?」 「…薬草取りに行って来るから、リスフェル達に遅れるって言っといてよ。」 ベルハウトはそう告げると、 あっという間に 樹海の中へ紛れた。 「あっ…!仕方ありませんね…。一度みんなの所に戻りますか…。」 ウルクはため息を吐いて、 彼が置いた昼食に使う食料を 一人で抱えて歩き出した。 別の影がベルハウトの方へ 消えていった事など 魔力の濃い樹海では、 正しき聖者のウルクでも 気付く事は出来なかった。        †
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