~重過ぎる過去~

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彼は肩で息を切る。 数秒の間ベルハウトは、 動かずに立ったままだった。 「…なぁ…この世界は誰かを助けたいと思っちゃいけねぇのか…?」 ベルハウトは 握っていた剣を手放す。 剣はからんと 乾いた音をたてて落ちた。 「…なぁ…この世界は…そんな願い事を聞いてくれない程…意地悪なのか…?」 静かにベルハウトは呟く。 それに反するように、 彼のわき腹から流れる血が 大きな音をたてて滴り落ちる。 ベルハウトは体を 支える力を失い、膝をついた。 「…哀れなものだな。例えアルフィーの民でも堕人には変わりない。」 空色のローブに付いた 彼の鮮血を振り払い、 フィートは彼の目の前に立つ。 「…生きているだけで、何も知らない汚れた堕人。」 地面に倒れるベルハウトの 眼前に咲く花を フィートは細い脚で 踏み潰した。 「…っ!?」 「…滅んだ村のアルフィーの民の生き残り…。貴様もすぐに消えろ。」 ベルハウトの目が 徐々に虚ろに変わる。 抜けてゆく大量の血液が 彼の意識を奪っていった。 「…アル…フィーの民だから…、救い…たかった…。俺は………。」 「……。」 かすれたベルハウトの言葉は、 泡沫に消えていった。        † 「みなさん、ただいま戻りました。あれ?セルティマはどこですか?」 食料を目立つ所に置いて、 ウルクは仲間の中に居ない セルティマの姿を リスフェルとエリオット、 カリスに尋ねる。 「あの…僕達も…さっき気付いたんです…。」 「頭がぼーっとしていて…どうしても思い出せないんです…。」 「…セルティマ、ベルハウト…。」 カリスは顔を曇らせて、 彼が来た道を指す。 ウルクはその時に、 一人離れた彼の事が 脳内を巡った。
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