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「ベルハウトが…【アルフィーの民】…?」
セルティマの言葉を、
学生のエリオットが復唱する。
「…これ。」
セルティマは
血をたっぷり吸った
赤黒い地面に咲く、
潰された一輪の花を摘む。
「ドローテルに運ばれた人達が言ってたのは、これなんだ。ベルハウトは意識がないのに、この花をずっと握ってたんだよ。」
彼の手の中で懸命に咲く花も、
あっという間にしおれた。
「エリオットが睨んでいた通り、ベルハウトは終わりを告げる民、アルフィーの民。」
「…!?」
「【アルフィーの民】は人の最期を看取る変わった民族でね。人の生と死を神聖な物として、医学や薬学に精通してるのが彼らの特徴さ。」
しおれ枯れた花に
セルティマはふっと
息を吹きかける。
花はほろほろと崩れ、
地面に返った。
「分かった?ほっといても、一人だけで治しちゃうよ。」
「…ベルハウト。」
リスフェルは肩を震わせ
すとんと座り込んだ。
「…急ごう、彼を一人にしちゃだめだし。」
「…私…何も出来ないよ…?」
「うーん…、お昼を作って欲しいな♪出来ればベルハウトのためにね。」
飾らないセルティマの言葉が、
元気を失ったリスフェルの
心を溶かした。
「…ありがとう。セルティマ…。」
「それじゃあ、ベルハウトを追いかけようよ。オレもう腹ぺこ…。」
一同は揃って離れて行った
ベルハウトを追いかける。
「…ベルハウトが無理して頑張る理由が…何となく分かった気がする。」
「…リスフェル、あなたが支えあげてください。恐らく、彼が抱えている物は……。」
ウルクは言いかけて止まる。
セルティマの怪しい笑みが
口をつぐんだ彼を
じっと見ていた。
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