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「リスフェル、エリオットに果物渡してきたよー。」
「…セルティマ…、タイミングを見計らってください。」
ウルクが冷めた視線を
呑気なセルティマに向ける。
場の雰囲気は最悪だ。
「…リスフェル、いつもそうしてベルハウトの事を心配してたんだね。」
「…うん。」
「今の彼は一人じゃない。オレも居るし、リスフェルも居る。そういった点じゃベルハウトを支えてあげる事が出来るでしょ。」
いつものふざけた彼とは
全く思えない優しく、
強く秘めた励ましの言葉に
一同は目を丸くする。
「…何さ、オレだって立派な聖職者ですよ?」
「…セルティマの二面性を、垣間見ましたね。」
「こんな言葉があるんだよ。『世界は尊い命を見捨てる程、意地悪ではありません。過ちに走った悲しい命に寄り添う事こそ、受け入れるための第一歩なのです。』」
「…意味深な言葉ですね。考えさせられます。」
「セルティマ、ありがとう。」
迷いを振り切ったまでとは
いかないが、リスフェルは
暗かった表情に
明るさを少し取り戻した。
「…さて、オレも手伝いますかな。」
「助かります。カリスとエリオットと一緒に、果物の皮剥き頼みました。」
「了解しました!」
「しました!」
セルティマはカリスと
一緒に果物の皮剥きをする
エリオットの方へ駆けた。
「…本当にセルティマは雲みたい。」
「そうですね。僕達も食事の支度を続けましょう。」
ウルクは一息ついて
再び力を込める。
彼女も肩の力を抜き、
支度を続けた。
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