~闇に沈む~

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「ベルハウト、おきた。だいじょうぶ?」 「…………。」 焦点の合わない蒼黒の ベルハウトの瞳に 少女の姿は 幻のように映る。 「だいじょうぶ?ベルハウト。」 「……あ…あぁ…。」 「リスフェル、リスフェル!おきた、ベルハウト、おきた!」 カリスの言葉に 一同は慌てふためいた。 セルティマにいたっては、 鍋で煮立せたミルクを うっかりこぼしそうになった。 「ベルハウト、分かりますか?」 「…ウ…ル…ク…。」 「…良かった、まだはっきりはしないようですが…。」 「意識が戻っただけでも充分だね。」 「…セルティマ…あ、あの…ミルク…こぼれそう…。」 エリオットに言われ、 急いで青年は鍋の方へ駆けた。 すぐにミルクを器に移して みんなに配る。 「はい、温めたおいしいミルク、一丁あがりっ!」 「…温めただけですが。」 「オプションとして、オレの愛を入れる事が出来ます♪」 「結構です。」 さらりとかわし、 ウルクは器に口をつける。 他の一同も面倒に 絡まれる前に、 ミルクを飲み出す。 「ベルハウト、これ飲める…?」 「…ありが…とう…。も…らう…よ…。」 白い手を伸ばして彼は リスフェルから、 ミルクを入れた器を受け取る。 「危ない、落とすよ…!」 「…分かっ…てる…。」 力のない腕は小刻みに 震えている。 リスフェルは見ていられず 器を隣りから支えた。 「…リス…フェル…。」 「…何でも一人でしようとしないで。」 「…大…丈夫…、無理なら…最初から…やらない……。」
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