~紛い物だから~

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どこか空虚で悲しそうな ベルハウトの言葉。 「ベルハウト、だいじょうぶ、なる、カリス、おもう。」 変わらず断片的な言葉だけで 彼女はベルハウトに 話しかける。 しかし、いつもなら 頬を緩ませ笑う彼の反応は あまりにも無反応だった。 「…ベルハウトォ…。」 元気付ける事が出来ない。 カリスはしゅんと縮こまる。 そんな事を知ってか知らずか セルティマが大皿を 運び込んでくる。 「ほーい、おまちどおさん!セルティマ特製、鈴なりトマトとミルクチーズの惣菜サラダ!」 「…並べた…言葉は…美しくても…、皿の上の…ゲテモノは…サラダ…なのか…?」 「ベルハウト、エリオットは美味しいって言ってくれたもん。」 その見た目は美味しい 食べ物とは思えない。 明らかに苦草の上に 適当に鈴なりトマトと ミルクチーズを乗せただけの 料理にベルハウトは 体を横に倒す。 「カリスもたーんとお食べっ!」 「いただき、ます。」 「…ベルハウト、食べてください…。か、体に…悪いですよ…。」 「…いい…、いらない…。」 苦草の正体を知っている ベルハウトはため息を吐いて、 まぶたを下ろす。 「ベルハウトのために、あえて薬草のサラダにしたのに…、」 「…他の選択肢は…なかったのかよ…。」 その傍らでカリスは 薬草の苦さに どたばたと悶える。 「~~!!!!」 「…ほら…、カリス…あんなに…悶えとるぞ…?」 「良薬口に苦しってね♪」 「…話になんねぇ…!」 呆れるベルハウトをよそに 能天気なセルティマは、 エリオットとカリスと一緒に 薬草仕立てのサラダを もくもくと食べ進めた。
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