~紛い物だから~

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「あっ、そうそう、リスフェルね、多分樹海出たと思うよ?」 薬草サラダを口にかきこむ セルティマが不意に口走った。 「…ウルクは…?」 「多分、一緒。」 興味を持ったベルハウトが 小さく尋ねると、 話を振った当の本人は 曖昧に答えた。 「…そっか…。」 「追いかけようよ。多分、あっちが待ってるよ。」 「…そんじゃ…行き…ますか…。」 何も口にしないまま 動かすには無理がある体を、 ベルハウトは起こした。 ふらついたその瞬間、 彼の首筋に風が走る。 「……!?」 「…流石にそんな体で出歩いたら、今度こそ使い物にならなくなるから。」 セルティマが言い終わるか 否か、ベルハウトは ゆっくりと倒れた。 倒れかかる彼の体を支え、 セルティマは 何事もなかったように 食事を続ける。 突然の出来事に エリオットは驚き、 慌てふためく。 「ベ…ベ、ベ、ベルハウトッ!?大丈夫…ですか…?」 「大丈夫だって、気絶してるだけだから。」 彼の体を背に、 セルティマは呑気に答える。 「き…ぜつ…?」 「ま、軽~く錫杖の固い所で軽く殴っただけだし。」 「…セルティマ、ベルハウト。だいじょうぶ、ない。」 「そこで君の出番だ。カリス君。」 最後の一口を食べ終えて、 セルティマはにやけ顔で 乗り出した。 「治療術がまともに扱えるのは、カリスだけだから、ベルハウトに施してあげて。」 「…ベルハウト、だめ…。」 「…じゃあ、見殺しにすんの?」 言葉だけでは伝わらないが カリスはセルティマの 気迫に思わず顔を背ける。 「頼む、ベルハウトを助ける事が出来るのは、カリスだけなんだ。」 「…。」
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