~紛い物だから~

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エリオットとカリスは 場を離れて彼が休む部屋に 歩いて行った。 「…セルティマ、あなたならすぐに分かると思いましたが…。」 「…この事を見込んで、オレ達を移動させたのかな?」 「…流石にリスフェルが飛び出すとは思わなかったんですが…。」 二人は声をひそめて喋り合う。 リスフェルはそれを 耳を立てて聞いていた。 「二人共。何を話してるのかな?」 「わわっ!?リスフェル?」 「少しセルティマと今後の内容を…。」 「…そう?」 「はい。」 彼らが話していた内容とは かけ離れた答えに、 リスフェルはふぅんとした 顔をする。 「私もベルハウトを看に行くね?」 「お願いします。リスフェル。」 リスフェルは優しくはにかみ、 エリオットの方へ歩き出した。 「…おかしいと思いませんか?」 少女が角に消えたと同時に、 ウルクはぽつりと呟いた。 「確かに…そう思うけど…。」 「リスフェルの身に何かあったなら…話は早いのですが…。」 二人は顔を見合わせて、 これから訪れる嵐に 備えるような雰囲気に 心を引き締めた。 「そういや、ウルクも『正しき聖者』だよね?」 「…ここで言わないでください。」 セルティマの言葉に、 ウルクは呆れ顔を見せる。 「僕はあくまでも、ルトラスネリウルク。境界を越せばの話です。」 「…やだなぁ…。ウルク、ここは『境界』だよ。」 「…教会の間違いではなくて?」 ウルクが尋ねると 彼は笑って答えた。 「一度ぐらいは羽根伸ばしなよ。」 「…そうですね。そういった意味では伸ばせませんが。」
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