~紛い物だから~

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       † リスフェルが エリオットの後を追って、 すぐの事。 彼が休んでいる部屋に 彼女が入ると ベルハウトは起きていた。 「…ベルハウト、起きたのね。」 「…リスフェル…か…?」 「リスフェル、きた、きた!」 寝台の上で横になる ベルハウトの傍で カリスとエリオットが、 看病をするために あれこれ準備をしていた。 「リスフェル…、あ、これ…お願いします…。」 「…エリオット、違う、これ。」 少年が抱えていた毛布を ひったくり、リスフェルは 折りたたみながら言った。 「この毛布は、ここの備え付けでしょ?使っちゃだめよ。」 「あ…、でも、でも…僕達の分だけじゃ…換えが…回らないですよ…?」 「大丈夫、心配しない。私がきちんと管理してるから。」 盲目的なリスフェルの応答に 二人はどうしたんだと驚く。 「…リスフェル…。俺の事は…いい…。」 不安げな二人を見て、 ベルハウトは助け船を出す。 すると、リスフェルは 一瞬顔を曇らせたが 愛らしい微笑で答えを返した。 「…分かったわ。でも、これだけは片付けるから。」 「…それも…いい…。…やらなくて…いい…から…。」 きしむ体を動かして、 ベルハウトは上半身を起こす。 「…っ…!あぅ……。」 「…ベルハウト、パンとジャム持って来る。待ってて。」 「…っ、リスフェル…。自分で…やるから…。」 ベルハウトは自力で 歩こうと試みるも、 体力を失った体では 立つことすらままならない。 「…ベルハウト…。」 「…大丈夫、無理だけは…しない…。」 「…分かったよ。気を付けてね?」
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