~紛い物だから~

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一夜前までの怒号はどこえやら リスフェルは動こうとする ベルハウトの事を簡単に 許してしまった。 「リスフェル、だいじょうぶ?」 「…たった一度…怒っただけで…あんなに…人格が変わるなんて…。」 部屋を出るベルハウトが 居なくなると同時に、 リスフェルはたたんだ毛布を まとめ上げて部屋の扉に 手をかける。 「二人共、私これを片付けてくるから、それまで部屋の設備を整えてちょうだい。」 「…わ、分かり…ました…。」 承諾するエリオットを確認して 少女は部屋を後にした。 ベルハウトは部屋を すぐ離れた廊下に、 よたつきながら歩いていた。 「…っ…っ…!」 「ベルハウト、私手伝うよ。」 早速毛布を片付けたのか リスフェルはベルハウトの 隣りに歩幅を合わせる。 「…リ…スフェル…。」 「私はあなたの手を引くだけ。それだけでも嫌…かな…?」 足を止めたベルハウトは 息を切らして 穏やかに微笑むリスフェルに 皮手袋をはめた左手を 彼女に差し出した。 「…はい、私はあなたの隣りを歩くね。」 「……!?」 「…どうかした?」 彼はリスフェルの手を 取った瞬間、 顔にしわを寄せた。 まるで静電気の塊に 触れたような痺れに彼は、 声を震わせて尋ねた。 「…リスフェル…お前…、昨日…何を…した…?」 「何を…って…?」 「…お前に…違和感が…ある…。」 「…違和感?なんでもないよ。ベルハウトの方が気が立ってるから、そう感じたんじゃない?」 ベルハウトは憎悪を込めた 鋭く閃く青い眼光を リスフェルに向けた。 「…そんな目で見ないでよ。まるで私…悪者みたいに…。」
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