~想いかすれて~

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「で、リスフェルちゃんは機嫌を損ねて部屋に戻ったって口?」 教会の祭壇前で、 それまでの件を聞いた セルティマは顎をついて 苦笑いを浮かべた。 「……リスフェル…。」 今でも痺れる左手を眺めて ベルハウトは呟く。 セルティマと一緒に 話を聞いたウルクも、 静かに込めた声を出す。 「…彼女は今朝から様子がおかしかったんです。何かに取り憑かれたように豹変しました。」 「…オレも朝出会った時びびっときたね。『人間』に相容れない物を感じたよ。」 「…もう一度、あいつと話してみる。」 決心を付けてベルハウトは 両足に力を込める。 しかし、深手のついた 体ではろくに立つことすら ままならない。 「…っはぁ…!さっきまでは…歩けたのに…!」 「ベルハウト…、無理です。体力を回復させない事には話になりません。」 「…回復…ね…。」 「ベルハウトは朝から何も食べてないからだよ。オレとエリオ君で作った薬草サラダ一口も食べてくれなかったじゃん。」 セルティマの言う通り、 ベルハウトは今朝から 何も口にしていない。 「…職業病が災いしてね…。セルティマが作った薬草サラダ…あれ全部苦草だから…。」 「…だから、良薬口に苦しじゃん。」 「あれほど苦い薬草は…基本…別の薬草と混ぜるの…。」 ベルハウトは呆れた顔で、 意気込むセルティマに 突っ込む。 「ふぅん…。やっぱりあれ苦いからだめなんだ…。」 「…分かった?…腹減った…。パンとかない…?」 余計な事で体力を消耗した ベルハウトは 今にも消えてしまいそうな 声で呟いた。
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