~想いかすれて~

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カリスは両手で目元を 拭う真似をした。 恐らく『泣いた』格好を 彼女なりに表したようだ。 「……リスフェル…。」 「ベルハウト、なぜ無理をするのか分かりませんが…、その信念が彼女を傷付けるんですよ。」 はっきりと言い捨てたウルクは ベルハウトから離れる。 急に支えを失った ベルハウトは、 ぐらついて尻をついた。 とどめを刺すかのように ウルクは手を差し出して ベルハウトを見下ろす。 「今ここで僕が手を差し伸べても、あなたはきっとこの手を払うでしょう。」 「…ーーー。」 ウルクの言葉の通り、 彼は差し出された手を 掴む事はしなかった。 自分を見下ろすウルクに ベルハウトは今までにない 自分を侮蔑するような 顔で笑って呟いた。 「…信念なんかじゃあないよ…。こうするしかないんだ…。」 これ以上おかしくなった ベルハウトの相手を する事をウルクは止めて、 ため息をついた。 「…残念です。」 「…ウルク、もうそこまでにしときなよ。ベルハウトだって訳ありなんだよ。」 静かに怒るウルクに セルティマが優しくなだめる。 「一人にさせたいようにさせようや。」 セルティマはそう言い残して 教会の外へ楽しそうに 駆けて行った。 「…セルティマ…。」 「…あいつ……。」 「あ、あう、あう…、お…落ち着いて…。」 不穏な空気にエリオットは 涙目で訴える。 ウルクは黒髪を 生やした頭をかいて、 近くの椅子に腰を下ろした。 ベルハウトも再び 立ち上がった。 「あっ…、ベルハウト……。」 「…大丈夫…。ちょっと…動く練習するから…。」        †
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