~想いかすれて~

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辺りがしんと静まる。 一羽の鳥が飛び立った。 それを皮切りに、 組み手が始まる。 「たぁっ!!」 ウルクとの間合いを 一気に詰めて、 左手に握った剣を素早く振る。 彼はかけ声もなく攻撃を 紙一重でかわすと、 なんとも涼しい顔で リスフェルを見つめた。 「空旋舞!!」 「お…。」 見事な舞に回転をかけた剣技に ウルクは長槍で攻撃を 受け止める。 「…力が入っています。もう少し肩の力を抜いては?」 「…なら…この連撃はっ!!」 リスフェルは半歩下がり、 技を叩き込む。 「空旋舞!空旋蓮華!!」 先程の技にさらに 猛攻を加え、リスフェルは 強い斬り払いを繰り出す。 「…なるほど、斬り払いをまともに食らうと、ひとたまりもありせんね…。」 「それを…爽やかな顔で…さらりと言わないでっ!」 二人の組み手はさらに加速し、 勢いを増していく。 遠く離れた所で 模擬戦を見るエリオットは 今にも泣き出しそうな顔で うろたえている。 「…あわ、あわ、あ…危ないよ…。怪我してしまう…。」 「エリオット、しんぱい?」 「そ、そうだよ?いくら仮戦闘でも…危ないよ。」 エリオットは小さく答える。 こんなひ弱が模擬戦を 止める事は出来なかった。        † 結局、模擬戦は昼食を挟んで 夜刻が訪れる前まで続いた。 「…お疲れ様です。リスフェルの闘い方はとても参考になりました…。」 「はっ、はっ、いいえ…、こちらこそ…。」 「ぁ…終わり…ました?」 エリオットがのそのそと 裏庭に出てくる。
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