~想いかすれて~

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「ずっと組み手を続けていましたが…もう夜刻になりますから、今先ほど止めた所です。」 「……今日もここで宿泊するんですよね?」 「…ベルハウトの様子を見ない事には何とも…。」 汗を拭き、リスフェルは ウルクの返答に肩を落とす。 「…一応僕が釘を刺しておきましたが…、彼の事です。寝耳に水でしょうね。」 エリオットの横で カリスは彼の言葉に驚いた。 「悪い人って事だよ…?カリス…。」 首を傾げるカリスに リスフェルは呟くよりも 小さな声で教えた。 少女がもう一度 尋ねようとしたその時、 通りに面した教会の庭の方から 人々の悲鳴が走った。 『きゃあああっ!!』 ベルハウトの声ではないことは 悲鳴の高さで分かった。 何が起きたのか 確認のために教会の庭に 一同は足を早めた。 「あっ、ベルハウト!」 「…みんな…。」 教会の前で人々が悲鳴を 上げながら走って行く。 ベルハウトも何が起きたのか 全く分からないようだった。 「ウルク…、セルティマと一緒じゃなかったか?」 「僕達は今さっきまで裏庭に居たんです。セルティマは見ていません。」 異常が起きた町の中で 一同の緊張は強くなる。 夜刻の空とは思えない ぞっとするような 赤黒い空。 「…そら。」 「カリス?」 少女が恐ろしい空を指差す。 目を凝らして見ると、 空を滑空しているのは 大型の怪鳥魔物の群。 「…魔物だっ!!っ…ぅ…。」 「しっかりしてください。町の人々が逃げる理由がこれで分かりましたね…。」 ウルクは言い切ると 空を見上げた。 「ウルク…、それだけじゃ…ないよ…!」 人々の中から、 いつの間にか姿を出した セルティマが説明をした。 「樹海が燃えてる…!」
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