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息を切らしてセルティマは
その場に座り込んだ。
「…樹海の魔物が混乱して…こっちに来てる…!この町を襲うつもりだ…!」
「そんな!!」
「…魔力の濃度もさっきから濃くなってるのは…そのせいか…。」
じわじわと感じる魔力に
ベルハウトは
独り言のように呟く。
「このままじゃ…町が落とされる…。それだけじゃない、魔力のせいでこの町も樹海になる!!」
「…セルティマの言う通りだな…。」
「止めるつもりですか。」
ウルクの質問に彼は
静かに頷く。
「戦えない事くらい百も承知だ。でも…尻尾を巻いて逃げるのは俺の性に合わねぇ。だから…。」
ベルハウトは深く
息を吐くと
一同に頼み込んだ。
「みんなの力で魔物を食い止めてほしい。我がまま言ってる事は充分分かってる…。頼む、俺じゃ駄目なんだ!」
「ベルハウト、それはオレ達に『力を貸してほしい』って事かな?」
息を整えて立ち上がる
セルティマの言葉に
ベルハウトは答えた。
「みんなの力が必要なんだ。」
「当たり前です。その想い、確かに僕達は受け取りました。」
ウルクの言葉に続いて、
一同も頷いた。
「…みんな…。」
「誰かの手を掴む事も悪くないでしょう?」
ウルクは目を丸くする
ベルハウトの肩を叩き、
優しく微笑んだ。
すれ違ったリスフェルに、
彼は申し訳なさそうに
話かける。
「リスフェル…。ごめんな。」
「…ベルハウトの想い、きちんと伝わったから。」
抑揚のない彼女の反応に
ベルハウトは伝えた想いが
かすれない事を
赤く黒い空に願った。
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