~想いかすれて~

11/12
前へ
/636ページ
次へ
戦えないベルハウトと エリオットは、 他の仲間と離脱して 町の中心に逃げ込んだ。 一方、彼の強い想いを 受け取ったウルク達は 町の出入り口を固めていた。 「カリス、ベルハウトの所へは行かないのですか?」 「カリス、ベルハウト、の…たの…み?きいた。だから、いる。」 細い体のカリスは 凜とした表情で 笛杖を握り締めた。 少女の頼もしい言葉に ウルクは微笑む。 セルティマが錫杖を構えた。 地鳴りと共に土煙が もくもくと上がる。 その正体は魔物の群れだ。 『穢れなき澪の歌声、その唄に秘めし力に平伏せ。ダイダルウェイブ!!』 笛から流れる旋律が、 魔力に干渉して 海流を作り出した。 魔物の多くがその流れに 呑み込まれていく。 「カリス、その調子で頼みますよ。」 「あーあ、すり抜けた魔物来た!」 「僕達はここで魔物を止めましょう。」 長槍を魔物に向けたウルクは 先程まで居たはずの リスフェルが居なくなった事に はっと気付く。 消えた当の本人は、 ベルハウトが逃げた 町の中心部に居た。        † 「ベッ、ベルハウトに…手出しは…さ、させないっ…!!」 どこからか入り込んで来た 魔物にエリオットは、 ベルハウトの剣を握って 物抜けた声で 立ち向かっていた。 その後ろにはベルハウトが 弱って座っている。 魔物は喉を鳴らし、 エリオットに飛びかかった。 「ひっ…うああっ!!」 『エリオット!!』 飛びかかる魔物に 巨大な火球が直撃する。 魔物は即死だった。 「あっ、あぁ…。」 「…リスフェル?」 ベルハウトが火球が 飛来した方を、 彼女の名を呟き振り向いた。 そこに居たリスフェルは まがまがしい光を まとっていた。
/636ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加