~暴走の果て~

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口を魚のように ぱくぱくとするエリオットに、 美しい金の髪を持つ青年は 素早く話を変えた。 「エリオット、話を聞かせてください。」 「あっ、うっ…リスフェルがおかしくなって…、ベルハウトがウルク達とご、合流しろって…。」 涙声で嗚咽交じりに少年は ウルクに伝えた。 「どう、どうしよう!どうしよう!?リスフェルがベルハウトを殺してしまうかもしれないっ!!」 「…エリオ君。そらぁないよ。」 錫杖を手に下がる セルティマは不敵に答えた。 「だってほら、あれリスフェルでしょ?」 突然、目の前に群がる 魔物の群れが四方八方に 吹き飛ばされた。 一同の体に強烈な熱風が 吹き付ける。 「うわっ!!あっちぃっ!!」 「…くっ!」 セルティマは錫杖を盾にして 爆風に耐える。 ウルクもエリオットを抱え 丸まるようにして耐え忍んだ。 「これじゃ樹海になる以前に、砂漠になっちゃうね…。」 「…洒落になりません。」 魔物も自然の緑も きれいさっぱり焦土の 殺風景が広がる光景に セルティマがぼやくと、 ウルクは頬に付いた煤を 拭って呟き返す。 とんでもない爆風を 生み出した張本人がぬらりと 姿を現す。 『…ふぅあぁ…。』 「あっ、あぁ…リスフェルが…リスフェルが…!」 エリオットは 目を覆って震えた。 黒い艶のある彼女の毛髪は 灼熱に燃ゆる緋色。 つぶらで優しい 青味を帯びた瞳は、 もはやどこを見てるのか 分からない程 くすみきった灰色。 彼女の姿には程遠い。
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