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はて、紅魔城とは聞いたことのない名前だ。
さっきの騎士団の言葉に間違いがなければ、此処は紅魔城という所で、私の知っているロチェストではない。ロチェスト以外の、何処かに建った城。
「一体、何処だ……?」
タイタン戦の時にいた人物は、傭兵団と騎士団。その中の誰かが死にかけていたであろう私を此処まで運んできてくれたということなのか。
十中八九、ドゥイン様がこの城の者達、もしくは誰かに繋がりがありそうだと伺えるが。見たところ同じ騎士団もいることだから、有り得る。
ロチェストではなく、この紅魔城に運んできた真意は、謎だが。
「まずは、誰かに会わなければいけないか」
今はもう痛みもなく、案外身体も軽い。全快したこと、それに私を助けてくれたこと。その旨について感謝しなければいけない。
この城の主人に当たる人物。その方に会えればいいのだが。バルコニーに留まってはそれは叶わない、取り敢えず戻ろう。
そう思って、外の風景に目を向けていた私は踵を返した。
「―――――ぅおッ!?」
驚いた。とんでもなく驚いた。心臓が凄い跳ねた。
振り返ったらその出入り口にいつの間に、人が立っていたのだ。此処には私一人しかいないと思っていた分、正直に声を上げて驚いてしまった。
その私の後ろに建っていた当の本人は、特に驚くことなく立ち続けていた。
その人間は少女だった。
今まで類を見ない、水色にさらに白が掛かった色の髪。パジャマのような上着に、長いスカート。瞳は青く、宝石と例えるに相応しい程澄んでいる。
無邪気さをそのまま固まりにしたようなその少女は、私に向かって小さな指を向ける。
「あなた、お城の前で倒れてたお兄ちゃんだー!」
「えっ」
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