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城の前で倒れていた?
いや待て、それはおかしい。確かに私は、魔族前線基地にて力尽きたはずだ。確かにあそこで戦っていた、間違いない。
なのにこの少女はこんな事を――――そもそもこの少女は、一体何者なのだろう?
見た限りでは、城下町や村で生活する民とは思えない綺麗な容姿である。此処が城だと言うこともあって、即座にこの少女が特別な存在であることだと直感したが……。
「はぁ、はぁ、レミリア、お嬢様! 勝手に動かれては、ふぅ、困ります!」
レミリアお嬢様と呼ばれた少女の背後から、もう一人階段を上ってきた。女性で、この人も見たことがない服装をしている。
黒い髪に赤色のカチューシャ。黒と白とで配色されたエプロンとスカート。この白の使用人なのだろうか。ロチェスト城にもこんな人が居そうな雰囲気だ。
「エレン、あのお兄ちゃん、此処にいたよ」
「へ!? そんなことあるはずな……い……」
この使用人はエレンと言う名前らしい。走ってきたのか、まだ息切れが収まらない彼女は少女の言葉に反論を述べるも、指を指している方向を確認する。
案の定、その指の先には私が居るわけで。それを知った刹那、まるで信じられないと言わんばかりに口を押さえ、目を見開いた。
「……ど、どうも」
「だ、だだ大丈夫なんですか貴方ッ!?」
「へぇあッ!?」
軽く挨拶したものの普通に遮られて、一瞬で少女を抜かしては一瞬で私の肩を掴み、ガクガクと揺さぶられた。
「エレンー。その人怪我人でしょ?」
「あっ! ごめんなさい!」
「いや、大丈夫……」
忙しない彼女は少女の言葉に取り乱した自分を直し、見えない速度で頭を下げて謝罪してきた。
一瞬風を感じたような気が。
と、一連の動作を終えた彼女は顔を上げた。その表情はもはや驚愕ではなく、何か使命を抱えているかのような真面目な顔つきだった。表情の変化も忙しない。
「でも、貴方は凄い怪我してたんですよ? まさか胸に穴が……」
結構グロテスクな映像だったと伺える。彼女は両手で顔を押さえてグワングワンと振った。思い出したくなかったようだ。
「でも、まだ息があると分かった時が一番ビックリしました……」
…………。
うーん、私は人間をやめてしまったようだ。
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