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と、二人に何か亀裂が走ったようなギクシャクした雰囲気のまま、私が先程寝ていた部屋の前に引きずられてきた。無言で引きずられた。無言って怖いな。
「ではお嬢様、暫くの間部屋でお待ちください」
「え、此処の?」
「貴方の」
「ちぇっ」
多分、ダメもとで冗談じみた本音を言ったんだろうが、あっさりと却下された所為で余計に不機嫌になった少女。
この少女、やたらと着いてきたいようだが……許してはやれないのだろうか。別に私は構わないのだが。
まぁ、お嬢様と呼ばれいるのだから、障害が無きにしも非ずの可能性はなるべくゼロに近づけたい、そういう大切な存在なのだろう……特に、城の前で血塗れで倒れていた何処の馬の骨かも分からない私は、警戒されて当たり前だと思う。
「分かったもん。戻ればいいんでしょー、戻れば」
どうやら、少女が確実に自室に戻ると分かるまで監視し続ける使用人。それに対して流石に諦めたか、私たちに背を向けて歩き出した。
そして、歩きながらその小さな頭を私に向けて、
「いつかお話しようね?」
と。
それだけ言ってトテトテと、いつ転んでもおかしくない危なっかしい足取りで何処かへ行ってしまった。
それを確認したら、私の手を掴んで離さない使用人は、はぁ、と一息つく。さも、やっと帰ったか、と言っているかのように実に怠そうだ。
「……取り敢えず、中に入ってください」
空いた手で部屋の戸を開く。そこには幾多のベッドがきちんと並んでいる、見たことのある光景が広がっているわけで、別段新鮮味はなかった。
私自らが望んで足を踏み入れる、と言うよりはやっぱり引きずられて部屋に連れ込まれたような感じで入室。私が逃げる事にどれだけ警戒しているやら、底が知れない。
戸が閉まったら使用人がまた、はぁ、と息をつく。静かになったからなのか。
「まぁ、色々混乱していそうな様子なので、説明しますね」
そう言うと、私の手を離して私が寝ていたベットの方へ案内してくれる。断る理由もなく、彼女に着いていった。
そうしてベットの横にきたら、「どうぞ、手を貸します」と言ってベッドに寝かせようとする。取り敢えず横になれと言うことか。怪我人だし。
別に手を貸して貰わなければならない程、身体は弱っていなかったのだが。彼女は身体を支えてくれた。いや、若干ベッドに無理矢理寝かせた感があるけど、気のせいだろうか。
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