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「まず貴方は、貴方自身の状況を理解していますか?」
「状況……」
大体のことはハッキリと覚えていて、口に出して事細かに説明できる。
敢えて大雑把に言うと、死んだと思ったら生きていてマジで奇跡、と言う感じだ。
ただ、あの戦闘からこの紅魔城とやらに辿り着くまでの経緯は、さっぱり分からない。
「私は……魔族と戦っていた。それから――――」
「えっ。ちょっと待ってください、魔族ですか?」
「ん? あぁ、魔族だ」
「魔族って、あの魔族ですか?」
「……どの魔族か分からないが、その考えている魔族で間違えてないと思う」
「……うーん。記憶障害でしょうか? もう暫く安静にした方が良いと思いますよ」
え。何故に?
「い、いや。大丈夫だ……。話を元に戻すが、それから私はその魔族を討つべく――――」
「まままま、待ってください、ストップ、シャラップ。冗談は止してくださいよ?」
「冗談? そんなこと――――」
「魔族なんて、オカルトみたいなこと……」
待てゐ。別に私は空想の世界観を語っているわけではない。私も初めて見聞きした時は流石に驚いたが、魔族という人外、異形は存在している。
前線に出て戦わないにしても、一般人は知っているはずだ。
「……いや、魔族は実際に居るが」
「ハハハ、ゴジョウダンヲ」
「いやだから、冗談じゃ……」
「そんなのが居たら私たちみんな死んでますよ」
「…………」
私は何度も剣を振ってきたんだ、その存在は間違いない。だがしかし、仮にこの使用人の言う通りなら、この紅魔城周辺には魔族がいない、という解釈をせざるを得ない。
まさか、隣り合わせに魔族がいないという安全地帯があるとは思っていなかった。といっても私もそこまで世界を広く見てきたわけじゃないが。
……使用人も、嘘を言っているようには見えない。
「じ、じゃあそれは取り敢えず置いておこうか……それから私は負傷して、気づいたら此処にいたんだ」
「な、なるほど。刺客にやられたんですね!」
……埒があかないので、そういうことにしておこう。
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