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魔族の轟く声を聞いた。
それに答えようにも出来ず、既に限界に近い身体の疲労に気合いで麻酔をかけて、グッと剣の柄を握り締めることしかできなかった。
あぁ、確かにこいつは強力だ。今まで戦ってきたものとは段違いに強い。端から見ても、とてもじゃないが人間で撃退するというのは酷な話であった。
オーガであることを象徴する巨大な肉体、その皮膚は赤黒く、特徴的な一つ目の顔。
巨大である分四肢は勿論太く、そこらの建物を支えているような柱では比べ物にならないくらい、太い。
足には人間二人で持つような丸太を幾分か並べて縛ったものを履いている。人間でいう草履といったところか。
それで地面を歩く度に、洞窟のような構造をしている辺り一面がグラグラと揺れ、このオーガがどれだけ大きいかを表している。
この"タイタン"という魔族がはジャイアントオーガと呼ばれているのにも納得がいく。
「くっ、コイツ……しぶとい奴だ」
「けっ、かなわね~な、こりゃ」
後ろで私の先輩――――マレックさんとゲレンさんが、そう悪態をつく。
私がかつて所属し、私を支えてくれた色々な方々がいるカルブラム傭兵団。双方その中の一人であり、カルブラム傭兵団特有のヘルムに黄土色のチュニックを身につけている。
彼らも私と同様、両手に剣を携えている。デュアルソードと呼び、攻撃的な戦闘スタイルの一つである。
実力も申し分ない二人だが、その彼らも既に満身創痍。肩を動かして必死に呼吸を整えているのが見て取れる。今の今まで身体を激しく動かしてきたのだから当然の状態だ。
「……しかし此処まで来てしまったのだ。傭兵、弱音を吐いている暇はない」
私の直ぐ隣で盾と剣を構えて、タイタンと対峙するのは、ロチェスト王国騎士団の一人、ドゥイン様。女性でありながらも騎士団、その実力は決して弱くない。
彼女は騎士ならではの重装備である。しかし何度強力な攻撃を受け止めたことか、持っている盾は所々がひしゃげており、そろそろ使い物にならなくなっている。あと数発受け止めれば大破するだろう。
ドゥイン様もまた、私ら同様追いつめられている気配がある。
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