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既に数時間ほどの戦いだが、一向にタイタンが怯む気配がない。愚痴りたくなる程のタフさである。斬りつけても斬りつけても止まらない。
嘗てこのタイタンはとあるオーガと一戦あったらしく、その時タイタンは破れた。しかし殺すまでには至らず、"二度と出れない場所に閉じこめた"ようだ。
殺せなかったからの処置だろう。オーガ同士の争いでもやっとのことだったのだから、人間が挑んでも無力であることは薄々感じていた。それはカルブラム傭兵団もロチェスト王国騎士団も、同じだった。
しかし、私は黙っていられなかった。このまま見過ごすというのが嫌だった。誰かが傷つくのは、あってほしくなかった。
「……皆さん」
私は覚悟を決め、ある作戦を打ち立てる。作戦といえども、私だけが実行する特攻のようなものだが。
各が私の声に反応し、私が次にいう言葉を待ってくれる。その間は私に剣を一度収め、腰回りにつり下げられているポーチを探って、ある物を掴み出す。
誰もが私の行動を不審に思っているだろう、このような事態にただ一つの武器を収めようとは。
「……おい、リシタ?」
「げっ! 新入り、そいつぁ前に俺が……」
「ッ!? 何故お前がそれを持っているのだ!?」
私が取り出したのは、野菜のようなもの。勿論食用の野菜ではない。
実の部分は身の毛がよだつ小人の人形のようなシルエット。その人形の頭には枝分かれした葉が生えている。確かこれが、「かわいい」といっていた人が傭兵団にいた。
騎士団には内緒の話だったが、私は嘗てこれと同一の物を少量口にしたことがある。あれは非道く気持ちの悪い物だった。視界は揺らぎ、自分で居られなくなるような感覚を感じる引き替えに、強大な力が湧いた。
そのドーピングのような代物であるブラッディシェイド――――これを使えば、タイタンに対抗出来るはずだ。
「止めろ、リシタッ!!」
流石に、王国騎士団のドゥイン様は厳しかった。それもそうか、あのような効果だと知れば……
しかし、私は決断した。
「すみません、ドゥイン様」
一言言ってから、私はブラッディシェイドの実にかじりついた。
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