PH: EP0

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片足が急になくなった所為で、タイタンはバランスを崩して隙だらけの状態になる。大きな背中の後ろにいる私は好機と判断し、追撃に移る。 身に纏っていた防具の重さを無視し、両足に力を込めて跳躍する。そしてデュアルソードの切っ先を腕の力と体重を乗せ、タイタンの背中に突き立てた。 今まではまともに通らなかった刃がスルリとタイタンに食い込み、魔族特有の血を間欠泉の如く噴き出させる。ただ剣を刺しただけなのに、タイタンの身体は強い力に押されたかのように前のめりになる。 刺した剣を抜き、タイタンの背中でデュアルソードを大上段に何回も何回も何回も斬りかかった。その度に致命傷となる深い傷をタイタンの背中に作り、おびただしい量の血を出す。 ビチャビチャと私の身体に降りかかったが、気にもとめない。 そしてついに断末魔を上げることなく動かなくなったタイタン。前のめりの体勢を支えていた両腕も力なく崩れ、頭から地面に激突した。 「うぅぅあぁぁがぁぁぁぁぁぁッッ!!!」 死んだ、と分かっていても、私は最後に片腕を振り上げ、できる限りの力を込めて振り下ろした。剣が黒い気配に包まれ、明らかにおかしい長さの刃渡りに変貌し、タイタンの上半身を縦一線に刻んだ。 バックリと上半身が割れ、確実にコイツは絶命した。勝ったのだ。 「はぁっ、はぁっッッ……ぐぅぅぁぁぁあ……!!」 勝った。勝ったのだが。 やはり力を得る代償である、この頭を割るような苦痛は止まってくれなかった。 理性を刈り取らんと、ブラッディシェイドの効能が猛威を振るう。まずい、ここで私自身を保てなくなったら、何が起こるのか……。 もういい、もういいのだ。私はやるべきことを達成できた。みんなを守れた。だが此処で力に狂い、守ったものに剣を降りかざすようなことがあれば、笑い話にもなりゃしない。 それなら、いっそ―――― 私はデュアルソードの片方で、自らの心臓を刺した。
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