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ブシャ、と生々しい感覚が腕に伝わる。それを認識して初めて、苦痛が止んだのが分かった。
苦しみから逃れるのに、まずは歓喜した――――が、次いで直感的に死そのものを体感して、私は恐ろしくなった。
あぁ、これが狂ったものの末路なのか。何も死ぬことはなかったんじゃないか――――いや、私は死ぬべきだっただろう。そうでなければ、マレックさん達をきっと殺しているに違いない。
自惚れていたわけでもなく、ブラッディシェイドの力に呑まれまいと抵抗するのは、私には無理だった。
下を見ると、思い切り貫通しているデュアルソードと、それを握る血で汚れた私の手を見ると、力が抜けた。全く、自らが起こした行動だというのに。
ズルリと私の身体が崩れ、タイタンの背中から滑り落ちるようにして、地面に激突する。頭から言っただろうが、もはやそれを痛いと思えるほどの感覚は私にはなかった。
「リシタ! おい、リ…タ!」
「新入…! …い!!」
「…の、…鹿…が!!」
三人が近づいてきている音が聞こえる……いや、近づいているんじゃなくて、遠く離れていっているのだろうか? どんどん、音が小さくなっている。
「…………かふっ、ゴホッ」
声を出そうにも、口から出るのは血だけだった。
(馬鹿なことをして、すみません)
もう、謝罪の意を相手に向けるしかなかったから、そうした。それで皆さん方が許してくれるはずはないだろうが……。
瞼が重くなってきたので、従うことにした。最後の瞬間にみたモノは、私の心臓に突き刺さった剣と、地面に突き刺さった残り片方の、夕焼け空に照らされた愛用の剣であった。
…………さようなら。
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