PH: EP1

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…………視界が真っ暗だ。 私は死んだのだろうから、やはり此処は死後の世界? たしかコレンと言う村落でカルブラム傭兵団として活動していた頃。彼処には魔法について研究するところがあった。そこにいたブリンという方が"エリン"という楽園について少し教えてくれた。 言葉だけ聞いていると、私は死後の世界がエリンだと、初めは思っていたが……いややはり、ここが所謂エリンと言うところなのだろうか。 やたらと真っ暗である。生憎楽園と言うには相応しくないと思うのは、私じゃなくても誰でもそうであるはずだ。 ……………。 おや、光が見える。 そしてさらに、その光がどんどん近づいてきているような。 遂には光は視界全体に広がり、黒から白へ一気に移り変わる。いきなり明るいモノを見た所為か、目には少しばかりの灼くような痛さを感じた。 ……………。 白の視界に、色が映えた。 豪勢な感じがした。民家とは思えない美しい彩りの天井に明かり―――――天井? 明かり? 「…………は?」 初めて声を上げることができた。そしてさらに、背中に何か柔らかいモノを感じ、私の胴体に何かが多い被さっているような感触に気づく。 一瞬、それは剣が刺さり続けている感触だと錯覚したが、そんなものではない。もっとこう、安眠を取っているかのような優しいもの。 目を動かして、それが何なのか確認した。身体の温もりから薄々感じてはいたが、それはやはり毛布であった。 「…………」 さらに、手を動かせた。 手を動かせれば足も、と思ったので足も動かしてみたら、動いた。五体の感覚が確かにある。 両手と腹筋に力を込め、どうやら仰向けになっていたらしい私の身体を持ち上げる。何事もなく、生きている実感を噛みしめていたあの時の生活のように、同等の仕草。 いや、死というモノは動けないものじゃなかったのだろうか。今の私は普通に動いているのだが、その辺はどう考えればいいのだろうか。 …………。 つまり、私は生きているのか?
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