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「いや、確かに……はッ!?」
今を生きている、つまり私はあの行為で死ななかったということか。確実に心臓を貫いていた、そうでなくてもあの意識のロストを体験すればそれはもう死んだも同然と思っていた。
確かに剣を突き立てた胸の中心に手をやると……何もなかった。剣すらなかった。その代わりに治療をしたのであろう、包帯が心臓部位を中心にグルグルと巻かれていた。
これは……誰かが私の命を繋いだということだろう。一体誰だろうか? カルブラム傭兵団? それともドゥイン様が?
いや、そもそも此処は一体何処なのだろう。記憶を頼りにすると、コレンにあるカルブラム傭兵団の宿舎は、このような見栄えのつくりではなかったはずだ。
ではここは、ロチェスト城であろうか? 私はあの大門を通ったことはないので、あの巨大な城の内部がどういう構造なのかはっきりしないが、知っている中ではそうとしか考えられない。
改めて辺りを見渡してみると、ベッドが幾つもあるようだが、それぞれのベッドとベッドの間に互いの仕切になるらしいカーテンが、壁際にまとめられていた。
そして私は、そのベッドの一つに安静になっていたわけだ。
この部屋、どこかロチェスト騎士団の生徒の宿舎に似ている雰囲気があるが、恐らく負傷者や病人などが使う病棟、と言う感じだろう。
……何にせよ、剣によって貫通した身体を治癒されるために此処に運ばれたのは、間違いない。
「皆さんに、感謝をしなければ……」
こうして独り言を言えるのも、彼らのおかげだろう。身体は今まで眠っていたにも関わらず軽く、怪我したことも無視して十二分に動けそうだ。
私は胴体に掛けられていた毛布をはぐり、ベッドから離れる。気遣ってくれたのか、そこにスリッパもあり、それを使わして貰うことにした。
出入り口の取っ手を引き、取りあえず病棟らしき場所から退室した。
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