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「…………そっか。うん、OKOK!じゃ、また今度ね!」
通話終了ボタンを押すと、まだ手をつけていなかったアイスカフェラテにストローをさした。
今日は久しぶりに、サブカル友達のアッキー(ちなみに同い年、同性)とシモキタで遊ぶ約束をしていた。しかしたった今、アッキーに急な仕事が入りキャンセルとなったわけで。
……これから何しようかな。
いつもなら一人遊びは十八番なのに、こういう時だけ寂しく感じるのは何故だろう。
カフェラテを飲みながらぼんやりと店員さん達の動きを眺めた。
あ、あの人、誰かに似てる。
お笑い芸人の……誰だっけ?
坊主と髭面が強面な雰囲気を醸し出してる……ああ、出てこない、モヤモヤする。
必死に思い出そうと脳内を引っ掻き回していると、今度は店内に流れているBGMが気になった。
これ、聴いたことあるぞ。
懐かしいな、もう何年前の曲だっけ。
ほら、サビで急に盛り上がるやつ。
なんだっけ……くそぅ、思い出せない。
「…………はぁ」
こういう時だよね。寂しい気分になるのは。
「ねぇ、あの人お笑い芸人の人に似てない?」とか、「この曲なんだっけ?」とか、そういうくだらない話に付き合ってくれる誰かがいたらな、って思う時はある。
別に答えなんて出なくていいんだ。
ただ、そんなほんの些細なことを共有できる相手。
この向かい側に座って、ホットコーヒーなんか飲んで。
私のどうでもいい話に、笑って付き合ってくれる人がいたら、人生もっと楽しいのかなって、思う時もある。
…………いかん、弱気モードが発動してしまった。
弱をせめて中くらいには戻さないと。
こういう時は鳥海先生の恩恵に与かろう。
鞄の中から本を取り出そうとするも、中身がゴチャゴチャしていて見つからない。
ひょっこり顔を出した『マメに生きよう』バター醤油味が無言で私を戒めているように見える。
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