ハサミ男現る!

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「ちょっといいですか?」 「…………え?」 鞄を漁る私の視界に入り込んだ影。 満面の笑みで向かい側の席に座ったのは、面識のない若い男だった。 「……なんですか?」 怪しい。怪しすぎる。 だって見るからに私には無縁な男だ。 ……多分、というか絶対年下。 見た目も雰囲気も空気感も、フレッシュというかなんというか、とにかく若い。 そして、……チャラい。 「お姉さん一人ですか?待ち合わせ?」 何この展開。 未だかつて経験したことのないシチュエーションだ。 これは誰かの陰謀なんだろうか。 でも、なんの理由があって? 私を騙してなんのメリットがあるというのだ。 私がお金持ってるように見えるか? 「おねーさん?」 放心状態の私の顔を覗き込む男。 サイドが短めの茶髪は毛先に束感があり、いかにも女子受けの良さそうな爽やかさがある。 小ぶりのシンプルなピアスが光る耳元と、くたっとしたティシャツから見える鎖骨がどことなくセクシーだ。 なんて綺麗な首元のラインなんだろうか。 おっと、いかんいかん。 このままでは向こうの思う壺ではないか。 新手の詐欺だかなんだか知らないが、私が引っかかるもんですか。 「……何か用ですか?」 だけどこんなイケメンと話す機会もないので、断るのはもう少し後にしよう。 「おねーさん、髪、キレイですね」 ………………? 「……………は!?」
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