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「ごめん、別れて。」
土曜の昼下がり。
この約1年、待ち合わせに使っていたどこにでもあるカフェ。
待ち合わせて5分もしないうちに、あたしに突きつけられた熱のない言葉。
「……なんで?」
別に理由なんか聞かないで、『はい、分かりました』で済むかもしれないのに、とりあえず聞くのがこういう時の流れって気がするから。
そして、予想がついてるクセに、その理由とは違うものを望んで、せめて最後の望みくらい叶えてくれてもいいんじゃないかと、居るかどうかすら信じていない神様にお願いしてみる。
店員さんが運んできてくれた、アイスティーとアイスコーヒー。
一旦仕切り直す感じで、お互いにストローを口に含むと、「それで?」って合わせた視線で航太に問いかけた。
「んー何て言うか。俺が悪いのかもしれないけど、千紗の気持ちに応えられなくなったって言うか。」
って言うか……何なの?
……そうだ。航太は付き合った頃からこんな男(ひと)だった。
別れることが決まると、今までものすごく好きだった彼氏に対して、冷静な目で評価し始めるのは、きっとあたしだけじゃないはず。
まるで、〈恋〉って名前の薬の効果が切れたみたいに。
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