矢印が動くとき

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ザザァーっと寄せては返す音が遠くに聞こえる。 手を繋いで江の島の中にある町を散策して、あちこちで遭遇する猫たちに癒されつつ、さらに進む。 「ここ、来たことあるよね?」 「あるけど、高校の頃だよ。その時と変わっちゃって、丘がなくなってるんだもんなぁ……時間が流れたって感じがする。」 随分整備されたそこは、水平線を一望できる丘になっていたはずで、地球が丸いと言うことを肉眼で確認できるとても好きな場所だった。 「俺も高校の時、この辺で遊んだりもしたなぁ。懐かしいな。」 団体旅行客とすれ違い、須藤さんのことをシュッとしたお兄さんと表現した関西弁の女性たちが、こぞって彼の写真を撮って去った。 「すごいですね、須藤さんの人気は。」 「いや、なんだったんだろうな、今のは。こんな体験したことないけど。」 嵐のようなひとときに、少し呆然としている彼も、なんだか可愛く見えた。いつもクールで仕事ができて……というイメージがなかなか崩れないから、こんな顔もするんだって見つけては、すごく嬉しい気持ちになる。 あたしといるから、そういう表情を見せてくれるのかと思うと、彼女の特権だと思えるから。
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