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………結界か。
札の貼られた障子の周り1m程を除いて、黒いぼんやりとした塊が縁側と庭を埋め尽くしている。
低俗霊の集団だ。
「払っても払っても、こげんで切りがなかとです。」
住職が因った様に笑ってこちらを振り返る。
「そうなんですか。」
そう返事をしてから、俺は低俗霊の塊をひと睨みした。
瞬間、黒い塊りは蜘蛛の子を散らす様にバラバラと散っていった。
それを眺めながら住識は、ほっほっほっとご満悦の声をもらす。
そして、障子の前に立つと
「しょか、お客さんばい。」
と、障子の向こうへ声をかける。
………が返答がない。
「しょか…しょか!」
住職が何度か問いかけたが、いっこうに返事はない。
住職はちらりと俺の顔を見て困った様に笑った。
それを合図に、俺は障子に手をかけ、勢いよく開いた。
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