印象 S

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「はぁ…………っ」 小さくため息をついた………。 もうすぐ夏だと言うのに、今日は少し涼しい。 ………はず。 山間いにあるお寺やけ、当たり前なんやけど………。 前に街に出たのっていつやったっけ? もぉ忘れたし………。 だいたい、いつから引き込もってんのかも分からんし……… どぉでもいいや…………。 はぁ……、熱いよぉ……………。 周りを見渡してみる。 薄いもやのよぉな黒い陽炎が部屋中に漂ってる。 兼尚(けんしょう)さんが『邪気』って呼んでるものだ。 『邪気』はユラユラ揺れながら少しずつ集まり、小さな固まりになって、『邪念』と呼ばれるものになり私の身体に降りて来る。 ……一つ、………また一つと。 あちらこちらで邪気は邪念となってゆく。 そして、髪に…頬に…首筋に…胸に…いたる所に降りてくる。 邪念に触れられたトコが軽く熱をおびる。 無数の邪念達は私にくっつくと、まるでナメクジのようにヌラヌラと身体を這う。 はぁっ…、熱いょ……。 熱いのにゾクゾクする………。 気持ち悪いのに、キモチイイ……。 頭の中は熱に浮かされ、白濁してて、どんどん何もかもがどぉでもよくなってく………。 今日はいつもよりたくさんいる。 身体を這う邪念の数はどんどん増えていく。 ………まだ来ると? 気付けば、私の身体は隙間なく邪念に覆われていた。 涙で歪んだ視界をこらせばまだ邪気は濃く、我も我もと新たな邪念が生まれてく。 ちょっと、もぉ限界なんだけど………。 我慢出来なくて、座った体勢を崩し畳に倒れる。 脚や背中が刺激に反応して、勝手にピクッと動いてしまう………。 呼吸が乱れて、浅くなる………。 『負けたらいかんばい。』 兼尚さんのいつもの言葉が頭を過ぎる。 ……分かっとぉ………分かっとぉっちゃ。 少しでも熱を逃がそうと、着ている白い浴衣の胸元を引っ張りパタパタと扇いでみた。 どぉにか刺激を誤魔化そぉと、脚をくねらす。
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