印象 S

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大人(主に兼尚さん)に見張られてない所で、友達と遊びたい。 その野望を胸にこそこそ寺を抜け出してここまで来た。 なら、友達をここで作ればいい!! しかーし、…………その前におしっこに行きたい!!! 大丈夫! テッシュもハンカチもポシェットに入れて来た。 いざ、そこのトイレへ!! ………そして、その公衆トイレで低級霊に遭遇した。 低級霊のすぐ横には手を洗ってる同い年くらいの女の子がいた。 だけど低級霊はすぐ隣りにいるその子には目もくれず、少し離れた入り口に立つ私の方へ寄って来た。 もちろんダッシュで逃げた。 ………遊具のある、他の子供や大人がいる方へ。 みんなが楽しそぉに遊んでいる中を突っ切った。 ターゲットが他に移っただろぉと思い振り返ったが、低級霊は他の人の間を素通りして私を追いかけて来た。 何で私だけっ!? ………何で私だけなんっ!? 意味も分からず、ただただ怖くて泣きながら広い公園の遊歩道を三周走った。 三周走った所で、世界がグラっと回った。 赤茶色に舗装された地面に付いた両手と膝が目に入る。 転んだんだ………。 「あらぁ!大大夫ね!?」 すぐそこのベンチで談笑してたおばちゃん達が心配そうに駆け寄って来る。 脇を抱えられて立ち上がる。 「酷かコケかたしてぇ、……」 「あぁあぁ……思いっきり擦りむいとるがぁ………」 「痛かろぅもん?」 心配してくれたおばちゃん達の言葉が次々に降ってくる。 震える手のひらを見ると、皮がめくれて血がにじんでいた。 「よぅけ走りよったけんど、どげんかしたと?」 そぉ聞かれてハッとなり、思わず 「お化けがっ………!!」 と言いかけて辺りを見渡す。 「お化けがおったんねぇ……そりゃあ、怖かったんやろうねぇ………」 よしよしとでも言う様に1人のおばちゃんが頭をなでてくれた。 低級霊は……… 気配すらも無かった………………。 私は……ただ、ちょっと……低級霊に冷やかされただけだったんだ…………。 怖がる人間を追いかけてからかうだけ。 よくあるケースだ。 飽きたのか、満足したのか……私が逃げてる間に低級霊はどこかに消えていた。 それに気付かず、私は必死で走り続けてたんだ。 ………バカみたい。
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