印象 S

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寺まで後少しの距離。 ひとしきり泣いて頭がスッキリした頃、私はあることに気が付いた。 道路を歩いてると、ところどころに邪気や邪念がいる。 当たり前だ。 カラスや野良猫と同じように世の中のどこにでもいる。 気付いたのは、空気中にフワフワ浮かぶそれらが、私にだけ吸い寄せられる様に集まって来るということ。 他の通行人にはあまり付いて行かない。 つまり、私はそぉゆうモノを寄せつける体質なんだ………。 人には見えないモノが見えてしまったり、人には感じれないものを敏感に感じとってしまうのも、……体質なんだ………。 『気を強く持て』 なんて言われても、跳ね退けるどころか、寄せ付けてしまう体質なんだから仕方ない。 寄せ付けない手段も分からない。 コバエがたかってる食べ物に対して、『お前がコバエを寄せつけるのが悪い。気合いで跳ね退けろ!』と言ってるよぉなもんだ。 そんなこと言われても、食べ物にはどぉしよぉもない。 寺に続く山道の前で、私を待ち構えてた兼さんにいろいろ叱られながら、そんな事をぼんやり考えていた…………。 それから数年後。 手には空の花瓶を抱え、自分も畳もグッショグショ。 邪念がどぉのこぉの言う前に、どぉ考えたって花瓶をひっくり返した私が悪い。 素直に謝ろぉと思い、後ろに向き直る。 兼尚さんの白い足袋の隣りに、黒のソックスが並んでるのが目に入る。 そっか、お客様だっけ………。 そのまま視線を上げた。 黒、黒、黒、紺……
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