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自分でもなに言ってるかわかんない程支離滅裂だったのに、変人は辛抱強く聞いてくれた。
「・・・・そっか、話してくれてありがとう」
顔は見えないのに、変人はまたふわっと笑った気がした。
・・お礼を言いたいのはこっちだよ、ばかやろう。
自分の気持ちをこんなにさらけ出したのはコイツが初めてかもしれない・・だからかな、素直にお礼が言えないのは。
「・・・・・・」
「・・君はさ、お母さんが女手一つで育ててくれたから、言いたいことも言えずに遠慮してるんだよね?」
変人が確認するように聞いてくる言い方が、なんだか優しく感じて少しくすぐったかった。
「・・・うん」
「そっか。でもさ、世の中口に出さなきゃ伝わらないことってあるよ?・・例えば人の気持ち、とかね?」
・・・・わかってるよ、そんなこと。
でも言えないことだってあるじゃんか・・。
「・・・なんて、君はわかってるよね、きっと。」
頭良さそうな気がするもん、とクスクス笑いながら言う変人に
「・・・馬鹿にしてんのか?」
つい声が低くなる。
「え?い、いやいや馬鹿になんかしてないよ!気に障ったならごめんね!」
顔も合わせてないのにあたふたしてる様子が手にとる様にわかって、なんだか力が抜けてしまった。
「んと、つまり、君は優しすぎるんじゃないかなと思うよ?」
・・・優しすぎる・・?
「・・優しいんだったらいいんじゃん。それのどこがいけない訳?」
初めて自分の気持ちをさらけ出して、初めて人からアドバイスというものをもらって・・自分に戸惑いと動揺を感じて素直に認めることが出来ない。
わかってるよ。
「俺が優しすぎるってなんだよ?優しくちゃダメなのかよ?母さんがずっと一人で育ててくれたのに俺が色々言える訳ないじゃんか・・!」
わかってんだよ・・・
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