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「・・・・っ、く」
自覚した途端に溢れてくる涙と声を押し殺す。
「え、あれ?な、泣いちゃった?!俺が泣かせたんだよね!?ご、ごめん!」
また慌て出す変人がなんだか可笑しく見えて、泣いてるのにクスッと笑ってしまった。
「わ、笑ったね?・・ふふ、まぁいいや。時には本音を言うことも大事だよ。大事な家族なんだからさ」
・・・大事な、家族。
明日には、その"家族"が増える。
お兄ちゃんってこんな感じなのかな、なんて関係ないのにふと思った。
「・・さんきゅ」
泣きながら笑ってるって変な顔してんだろうな、俺。
「・・!い、今さんきゅって言った・・!?言ったよね!?ち、ちょっと顔見させてお願い!!」
なにが変人のツボに入ったのか知らないが不意に木の向こうで立ち上がる気配がした。
うわっ、こんな顔見せたくねーよ・・!
慌てて立ち上がった俺は変人がこっちに回る前に駆け出した。
「っあ、ちょっ、待って・・!」
変人もすぐ駆け出してくる気配がしたが俺はとにかく走った。
・・・・・顔も見てないし、いきなり追いかけてくるような変人に
さっきからドキドキしてるのはきっと気のせいだ。
初めて自分をさらけ出したからか、初めてアドバイスなんてされたからか。
それか、初めて親身に話を聞いてくれたから、かも。
安心させるような気配出したりとか、決して責めたりしない優しい声で諭してくれたりとかそんなんが・・・・って!!!
ち、違う!!きっと走ってるせい!!それしかない!!
チラ、と後ろに目をやると外灯に照らされて変人の顔が見えた。
・・あれ、意外と若いな。っていうかイケメンだな、クソ!
顔を認識した途端更に激しくなった動悸に戸惑いながらも、なんとか変人を撒いた俺は家まで走って帰った。
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