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その日、僕は少ないこづかいをかき集めて。
爺ちゃんと一緒に文房具店へと走った。
「これください!!」
3、4人が入ればいっぱいになってしまうほど小さな文房具店に、幼少の頃の僕がムダにおおきな声で、この店のカウンターにデンと腰を据えてるオバチャンに商品を突き出した。
「おや、まあ幸人(ゆきと)ちゃん。小学生なのにもうシャーペン使えるのかい?」
「友だちはみんな使ってるから、僕だって使えるよ!
それに僕『ちゃん』って呼んでくるおばちゃんキライだ!」
おばちゃんは決まって、僕のことを『ちゃん』っと付けて呼んでくる。
子供の頃の僕はそれがカッコ悪くて大っキライだった。
だから、少しでも大人に見られるように、僕は真っ赤な炎がドクロの顔のようになって剣がいっぱいプリントされている、ここにあるペンの中で一番カッコイイのを買うんだ。
実はクラスでは誰も持ってない、僕の初めてのシャープペンシルだ。
「おやまぁ。
幸人ちゃんに嫌われちゃったねぇ…ホホホ」
「また『ちゃん』っていったぁ!!ムスー!」
「これこれ幸人。」
温かい声が聞こえる。
ポンっと僕の頭に乗った爺ちゃんの手は大きくて暖かくて、
荒げた僕の気持ちを魔法のように静めた。
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