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「すまんな、由紀子(ゆきこ)さん。」
「いいんですよぉ!
それじゃあ幸人くん、これ包むからちょっと待っててね。」
早く早く!と、シャーペンをラッピングしているオバチャンを急かしていた僕に、
幸人、と爺ちゃんがやさしい声で呼び掛け、僕の目線までしゃがんで話した。
「いいか幸人、
物はお金を払えば買える。
しかしな、いまお前に買ってもらったこの子は、この世に一つしかない。」
─────この子?
「じいちゃん、この子ってだぁれ?」
「ははは...ほら、いま幸人が買ったペンじゃよ。
いいか、あの子はこれからお前だけのために生きてくんじゃ。」
爺ちゃんは『物』を、まるで『生きている』かのように語った。
「じいちゃん、アレは物だから生きてないんだよ?」
「いいや、生きとるよ。
大切にしてもらった『物』には魂が宿る。
宿った魂はいつかお前に恩返ししてくれるんじゃよ。」
モノが、オンガエシ?
まだ幼い僕には....いや、大人になっていても、そんなことがあるわけないと、ただただこの頃のように僕は聞き流してるだろう.....。
「いいか幸人。
今日買ったこの子をお前の家族だと思って、
大切に、いつまでも使ってやるんじゃぞ。」
「うん、わかった!!」
僕は訳もわかっていないまま、じいちゃんの言葉におおきく返事をした。
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