プロローグ

4/4
前へ
/31ページ
次へ
「幸人ちゃん、お待たせ。」 「わぁい!!」 やっとシャーペンを手にした喜びで、 その時『ちゃん』っと呼ばれたことに気付かなかった。 丁寧に閉じられた袋を乱暴に破くと、オバチャンはあらあら、と困った表情を見せたがそんなのお構いなしだ。 逃げるわけでもないシャーペンを捕まえるように取り出すと、嬉しいものがボロボロの袋からこぼれ落ちた。 「オバチャン、これ.....」 「オバチャンからのサービス。 シャーペンの芯と新品の消しゴムだよ!」 そういってウインクしてくるおばちゃんに、 僕は最高の笑顔でお返しした。 「ありがとう!おばちゃん!! みんな大切にするから!! おばちゃんダイスキ!!!」 おやおや...、とまんざらでもない笑顔で送るおばちゃんを背に、爺ちゃんの手を引き家路へと急いだ。 爺ちゃんの言った 『 この子をお前の家族だと思って、 大切に、いつまでも使ってやるんじゃぞ。 』 という言葉.... 僕は爺ちゃんに言われた通り、 この日買ったシャーペンをずっと大切に使ってきた....。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加