~第一章~祝!入学『枢木(くるるぎ)学園』!!

2/27
前へ
/31ページ
次へ
「ここは、全然変わらないな。」 僕が来たのは、胸に挿してある《コイツ》を買った、あの文房具店だ。 5年前に両親の仕事の事情でマンションに引っ越してからは、遠くてなかなか来れなかった。 だけど今日、新しい生活を始めるため駅へと向かっていた途中で、昔通ったこの場所が懐かしくなって寄り道しに来たんだ。 「よい、しょっと。 オバチャ~ン、いる~?」 ガタガタと立て付けの悪い扉をなんとか開けて、 この店のオーナー、通称『オバチャン』を呼び出す。 オバチャン、起きてるかな? 「はいはーい、どなたかしら? あらいらっしゃい幸人ちゃん!! まぁ....イイ男になっちゃって!!」 程なくして出てきたオバチャン。 いきなり誉め言葉を大安売りするオバチャンは、あの頃より少しシワと白髪が増えていた。 「はは...そらどうも。 っていうか、オバチャン。 もう高校生になったんだし、 そろそろ『ちゃん』はやめてよ。もぅ。」 「イヤです! おばちゃんにとって幸人ちゃんは、いつまでもカワイイ幸人ちゃんだからね!」 やれやれっと僕は首を振ったが、 その顔はほんのりと嬉しそうな顔になっていただろう。 「それでどうしたんだい? なにか買い物かい?」 「ああ、うん。 ちょっと《コイツ》の芯切らしちゃって。」 「おや、それは。」 僕が取り出したのはあの日ここで買ったシャーペン。 あの頃に比べてグリップ部分が削れたり、多少汚れたりしているが、 いままで通り使うにはまったく問題のない状態だ。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加