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拭き取った手拭を無造作にたらいの中に放り込み、少女の顔を改めて見る。
髪の色こそ昨日の鬼子母神と名乗った女に似ていたが、顔は別人だった。
放つ気も、妖とは程遠く、病人のそれで細々としたものだった。巫女としてはまず
役立たずだろうと思われた。
当の彼女は ぽかんと半開きの口のままで、見知らぬ俺の顔を覗き込んでいる。
゛別人だ・・・だがこいつ・・・火傷に気付くのも とろ過ぎ・・・ 第一俺を見ても顔色
一つ変えやしない・・・"
碧 「あの・・・有りがとうございます・・・月讀さんのお友達ですか?」
肌は透けるように白く 、熱があるのか、上気した頬が桜色に見え、余計儚さを
感じさせている。
亜麻色の柔らかそうな髪が彼女の僅かな身動ぎに さらりと揺れる。
弥 「あ・・・いや・・・まあ・・・知り合いって事で・・・ところで・・・俺を見ても何とも
感じねぇのか?」
赤い髪に炎の様な隈取のある顔は、崩月山の鬼として知れ渡りすぎている、初
対面でも鬼だと気付き、恐れ戦くのが正常な人間の反応だと思っていた。
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