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街中の阿鼻叫喚を少し離れたところで、腕組をして静観している者がいた。
腰までありそうな長い髪を頭頂部で結わえ、戸板に寄りかかるその姿は、歌舞伎
役者の様に絵になっている。
その長い髪は淡い琥珀色を帯びたような白髪で、瞳も美しい琥珀色だ。
だが、その頬と頚には土色の文様がある。
町の中心部で雑鬼共が欲望を満たしている様を遠目に見ていたが、突然その
辺りに、突風が巻き起こり、稲光が幾つも落ち出した。
“なんだ!?この気は?・・・”
ほぼ同時に反対側で暴れていた弥々斬達もその手を止めた。
弥「なんだ!?この底無しのような負の力は・・・ ! 」
その場に先に駆けつけたのは、単独行動をしていた琥珀色の鬼だった。
「 ! 」
彼が見たものは、目を疑う物だった。
鬼である彼を押しのけて(鬼神変化はしていなかったものの)逃げ惑う人々・・・
そして、それに混じり一緒に逃げて行く 人々を襲っている筈の雑鬼達。
「お前らっっっ ! ? 」
一人の雑鬼が彼に気付いて、通りの向こうを指差し、叫ぶように言った。
「竜尊 ! あいつ、 やばいっっ 俺らは退散するぜ ! 」
竜尊と呼ばれた琥珀色の鬼が、その方向に目を凝らす。
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