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【明日もドルチェロボット】
新型アンドロイド『ドルチェ』の登場には感動した。
ロボット工学とアンドロイドの普及率において先駆を走る我が国。デザインや性能の差が縮まり、アンドロイドの販売競争はいかに低エネルギー、安価な燃料で可動できるかという競争にシフトしていった。
そして糖分で稼動するロボット、ドルチェ登場。甘い物好きの俺は感激と共に、即決で購入。
「起動準備完了、可動開始。ハジメまして、ご主人。」
チョコレートめいた柔らかで甘い色合いの髪が揺れ。茶黄色の瞳がぱっちり開く。
「よろしくドルチェ。さ、食えよ。」
嬉しくて、取っておきの和菓子をいそいそ並べる俺を、凝視するドルチェ。寒天に果物を封じた琥珀菓子は涼しげでドルチェの目のよう。
専用の角砂糖を食わせた方が良いのだが……せっかくだ、今日はいいだろ。
「琥珀菓子だ。和菓子は嫌か?」
「琥珀は宝石、宝石は食べれナイとデータにあります。違うのですか、ご主人。」
お。基本情報は網羅か。
「色が琥珀に似ているだけだ。成分は砂糖と寒天と……って最後まで聞け!」
砂糖の二文字を聞いた瞬間、ドルチェは電光石火で菓子を口に収めていた。俺の分まで食うな!?
思えば、初日だしと甘やかした俺も悪かった。
ドルチェの暴走は日を追うごとに増し物覚えの悪さも想像以上。
「庭で侵入者を捕らえまシタ。ご主人。」
「お隣さんのペット!? つかんだ兎の耳を離せーー!!」
うん、俺が悪い。黙って敷地を跨ぐ奴は捕まえろと命じた俺が。融通きかねえ!!
ドルチェの使えなさに数ヶ月後、我慢できずメーカーへ連絡した。
くそ、もう阿呆加減が俺の手に負えない。
「オールリセット?」
学習機能を最新版にするにはデータを全て入れ替え。サポート期間中なら無料だが……ここ数ヶ月とはいえ……ドルチェの記憶を消す?
ガシャーン
「また何したドルチェ!!」
ちょっとだけ、少しだけ。
最新版にしなかった事を今は後悔中。
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