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それは小雨の降る夕刻のことだった。
「うぅう……」
「なんであんな良い若者が……」
「隊長……えっぐ」
その場にいる者は皆一様に黒の喪服に身を包み、悲しみに暮れていた。
ウルムナフ・ハートバレイン護衛隊長の死亡が確認され、その遺体が本部へと帰されたのはかれこれ三日前にさかのぼる。
そして現在、彼の葬儀が行われている。
白い供花に包まれながら、写真の中で優しげな笑顔を浮かべる青年はもう既にこの世にはいない。
あまりに急な出来事にウルの死を実感できていなかった多くの人々は、その情景をみることでようやくこれが現実であることを思い知る。
「ウル君……なんで死んじゃったんだ……うぅ」
「嘘だっていってくれよ……」
そしてそれは不思議なことに、涙とかすれ声となって猛烈に押し寄せる。
「はぁはぁ……我は、我は信じんぞ……」
そんな中、真っ青な顔色のままに棺に近づくのは、護衛隊副隊長でありウルを親友として慕っていたカレン・ウッドスカーであった。
カレンが棺の中を覗き込む。そこには白の経帷子を着せられ血の気のない顔色で眠るウルの姿があった。
カレンは思わず目を逸らした。どうしようもない現実を突きつけられたカレンの心には、悲しみよりも大きな喪失感の方が先に来てしまった。その為、数秒の間その場を動く事が出来なかった。
「ばか……もの……」
ようやくカレンの口から小さな言葉が放たれた。
「ばかものが……」
カレンはウルの経帷子を思わず掴んだ。その目からは涙がこぼれていた。
「ワルキューレ殿たちを守ったとて……ウルが死んだらどうなる。皆が悲しむだけではないか……」
カレンの体は小刻みに震えていた。それはどうしようもない悲しみに包まれた彼女の体が必死に作り出した、ある種の防衛反応のような物だった。
「ばか……もの……うぅ……うわぁあああ~あああ~」
耐えきれなくなったその感情に、ようやく彼女の喉が応えた。カレンは泣いた。人目もはばからずワンワン泣いた。
その悲しみに耐えるには、彼女が歩んできた16年という歳月はあまりにも少なすぎたから。
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